Loveaffection

薔薇は甘くて柔しくて、魔。

「おやすみなさい、優しい王子。」

第1幕

「病めるときも苦しいときも、イエスが私を慰め元気づけてくれる。だから私はイエスから離れない。」(Herz und Mund und Tat und Leben 第6曲「イエスこそ、わが喜び」)

 ハムレットの統べるデンマークが見てみたかった。

ツアー中の5月に発表されふうまくんと共にオファーを疑い、どうやら本当らしいぞとまだ台本を読んだばかりのインタビューを読み漁り、予習をしろとの指令にいよいよ目前で重たい腰を上げ数冊の参考書を読みふけり、さてどんなハムレットが目の前に現れるだろうとワクワクした。不安とかはなくて、あるとしたら全てが初めての仕事場でともだち出来てるかなとかそういうので、出来上がってくるものに対してはとても期待していた。共演者から漏れてくるお稽古の様子に新鮮に驚き、何が普通かわからないので大変そうだなぁくらいしか思っておらず、とにかくおともだちが出来ているか心配し続けてた。

初日の9月8日、久しぶりに緊張で腹痛起こすくらい緊張していて、さて向かおうと思った瞬間に休演の情報が目に入ってきた。グローブ座で呆然と立ち尽くして、手紙を預けられると聞いて慌てて殴り書きのようなものを渡し、帰路についた。この日のチケットを握りしめているあなたが初日のお客さんだと言いきってくれた「わたしの」ハムレット王子の言葉で、やっと涙が出て悲しかったんだと他人事のように思ったりしていた。振替公演、あの時の涙が吹き飛ぶような真実身体が震えるエルシノアを観た。空気がピンと張り詰め「君」と呼ぶホレイショーの悲しみが切なく、立っていられないほど手や膝が震えた。誰がなんと言おうとこの日こそが初日なんだと思って、それは全日が変わらず大切な1公演であるという出演者の真意に反する感想なんだけれど、この日だけは許してほしかった。

ふうまくんが生きたハムレット王子は、愛と気高さの人だった。国を愛し、家族を愛し、信頼する友人を尊敬する役者を、恋人を愛する人。愛するからこそ気高さを失わないでほしい、愛するからこそ愛し続けられる人でいてほしいとずっと願ってた。気高さこそが人間の美徳だと、最後まで手を離さずに居続けた人だった。家族を愛しているから母には清く生きてほしいと訴え、恋人を愛しているからオフィーリアには俗世から離れてほしいと苦しんだ。愛しているから、国の荒廃が許せなかった。そういう、優しくて繊細な王子だった。フォーティンブラスの「時を得れば、名君と謳われたはずの方だ。」に顔を歪ませるホレイショーと同じ、この人が統治する国はどんな素晴らしい国だろうか見てみたい、と思った。思わせてくれるハムレットだった。ふうまくんにしか生きれないハムレットだ。気高さを追い求めた結果だから時間が足りないことだけが全てで、もしこの王子がデンマークに生きたらどんな国になっただろうとありもしない未来を惜しむ切なさが滲むハムレット。最後まで理想を追って自分自身と対話し続けた王子。

千穐楽、降り注ぐキラキラした紙吹雪を冗談交じりに両手を広げ天井を仰ぎ全身で浴びるふうまくんがいた。私たちが知っているアイドルのジャニーズのSexy Zoneのふうまくんだった。

  

殿下、王子、どうか安らかな眠りを。

せめて夢の中で、仲睦まじく、幸せな国と共にありますように。

  

第3幕

「イエスこそ私の変わらざる喜びである。イエスは私の心の活力であり、全ての苦しみから守ってくれる。だから私はイエスから離れない。」(Herz und Mund und Tat und Leben 第10曲「イエスこそ、変わらざるわが喜び」)